第3話:始動する裏の組織 〜電脳の竜と白理の狼、結託す〜

私小説『電脳の竜と白理の狼 〜デジタルハッカーと明治のリーガル・ガール〜』

「交錯した電脳と法理。今、二人の運命が『裏の組織』で結託する──」

『電脳の竜と白理の狼』をお読みいただきありがとうございます!

待望の第3話が始まります。


全く異なる時代に生きながらも、同じ「正義ゆえの傷」を抱える神城綾音と橘彩華。

二人がいよいよバディを結成し、現代の闇へ挑み始める大注目のエピソードです。

物語が大きく動き出す前に、まずは全ての始まりとなった第2話のあらすじをサクッと振り返っておきましょう。

■ 第2話あらすじ
いじめを助けた逆恨みで崖から突き落とされた明治のリーガルガール・橘彩華

死を覚悟した彼女だったが、突如現れたワープホールに吸い込まれ、令和の引きこもり青年・神城綾音の自室の天井からベッドへと落下してしまう。

あまりの荒唐無稽な事態に最初は警戒する綾音だったが、彩華の必死の訴えと、自分にどこか似ている「正義ゆえに理不尽な暴力を受けた」という境遇を知り、彼女を放っておけなくなる。

元の時代に戻る方法がない中、考え抜いた綾音は、絶望する彩華へ「とある提案」を切り出すのだった。

【神城綾音の脳内プロット】第3話:始動する裏の組織 〜電脳の竜と白理の狼、結託す〜

自室にタイムリープしてきた彩華をどう扱うべきか。事情を聞くほどに、自分と同じ「正義感ゆえに傷ついた」境遇だと感じ、綾音は彼女を放っておけなくなっている。

実は綾音自身、父の友人で私立・妃比谷高校の理事長を務める片桐果弦(かたぎりみつる)から、学園内の潜入調査を依頼されていた。

引きこもりの自分には無理だと断り続けていたが、理事長相手に無碍にもできず、困り果てていたところだった。

そこに、17歳で正義感が強く、身元不明で、かつ現代の学園カーストとは無縁の彩華が「降って湧いて」きた。これ以上の適任者はいない。

綾音は、自分の代わりに彩華に学園へ潜入してもらうことを思いつく。彩華に片桐のことと潜入捜査の件を話し、協力を提案する。

何が何だか分からないながらも、綾音の紹介で、二人は片桐の住む高級マンションへと向かう。

マンションに到着。インターフォン越しに「片桐さん、さっき話した奴連れてきたよ」と綾音がぶっきらぼうに告げると、玄関先に一人の男性が現れた。

一見、非常に柔和で優しい老紳士といった印象の人物。

綾音も幼少期から何かとお世話になっている。

しかし、彼には裏の顔があった。

それは、妃比谷高校で起こる数々の事件を裏から裁く、秘密組織の総司令官(コードネーム:鴉)という顔だ。

綾音から「この人が、さっき話していた片桐さん」と紹介され、片桐はすかさず「よくいらっしゃいました。まぁ上がって上がって……」と二人を高級マンションの自室へと招き入れる。

片桐の自宅は、明治から来た彩華には想像もつかないほどきらびやかな世界であり、思わず身構えてしまう。

玄関先ではにこやかだった片桐だが、自室に入った途端、真剣な表情に切り替わる。

テーブルに着くと、彩華は彼から衝撃的な事実を告げられる。

「綾音くんから話は聞いていると思うが……実は、我が高校で暴力・窃盗事件が勃発している」

さらに片桐は続ける。「既に犯人の目星は付いている。だが、証拠がない。下手に動けば、犯人と思われる生徒の親(超有名政治家)やPTA会長が黙っていない。多額の寄付金を盾に人権侵害だ何だとやりたい放題され、手が付けられない状態だ」と、苦渋の表情を見せる。

敵は、親の権力を背景に学校内のカーストの頂点に君臨し、暴力集団を操る「バカ息子(愚弟)」だった。

片桐は彩華の真っ直ぐな瞳を見つめ、切り出した。

「そこで、彩華くん。君には我が高校に転入生として潜入し、綾音くんのデジタル捜査と連携して物的証拠を掴んでもらいたい。……もちろん、その間の身の安全、生活サポートは全て私が責任を持つ。悪い話ではないだろう?」

彩華としても、このまま外に放り出されれば行き場はなく、生活のサポートは願ってもない話だった。

何より、いじめや暴力事件を親の権力で揉み消し、裏で息巻いている連中を、明治のリーガルガールとして放置などできるはずがなかった。

「その依頼、謹んでお受けいたします。この時代の理不尽、私が法(の論理)のもとに粉砕してみせましょう」

彩華は快く依頼を引き受け、ここに、片桐をボスとした、令和の電脳ハッカー・神城綾音と明治のリーガルガール・橘彩華という異色の「闇のバディ」が正式に結成されるのだった。

【第3話ストーリー】『始動する裏の組織 〜電脳の竜と白理の狼、結託す〜』

「……というわけだ。俺の代わりに、その学校に潜入してほしい」

ヘッドホンを首にかけ、ディスプレイの青白い光に照らされた神城綾音は、静かに、だが確かな熱を孕んだ目で橘彩華を見つめていた。

「潜入、捜査……ですか?」

彩華は戸惑うように、自身の矢絣(やがすり)の袖を握りしめた。明治の理不尽から逃れ、辿り着いた令和の異空間。そこで突きつけられたのは、引きこもりの青年・綾音の背負う「無茶振り」だった。

彼を信頼する高校の理事長から下された、あまりに重い密命。引きこもりの綾音には不可能な現場の捜索。しかし、戸籍もなく、現代のしがらみとも無縁な17歳の彩華は、これ以上ない「降って湧いた適任者」だったのだ。

「私に、拒否権はなさそうですね。何より、生活の保証をしてくださるのなら……」

二人はすぐに動き出した。綾音の案内で向かったのは、都心にそびえ立つ、見上げるような高級高層マンションだった。

「片桐さん、さっき話した奴連れてきたよ」

自動ロックのインターフォン越しに、綾音がいつものぶっきらぼうな口調で告げる。まもなく重厚な玄関扉が開き、一人の男性が姿を現した。

「よくいらっしゃいました。まぁ上がって上がって、立ち話もなんだからね」

白髪交じりの髪に、深い皺を刻んだ目元。そこにあるのは、どこまでも柔和で優しい「好々爺(こうこうや)」の笑みだった。綾音が幼少期から世話になっているというその老人こそが、私立・妃比谷高校の理事長──片桐果弦(かたぎりみつる)。

しかし、その正体は、学校内に蔓延る悪を裏から裁く闇の組織の総司令官、コードネーム「鴉(からす)」であった。

一歩足を踏み入れた部屋は、明治の良家で育った彩華の目にも、目眩がするほどきらびやかで近代的な空間だった。思わず身構え、背筋を正す彩華。

だが、応接間のソファーに腰を下ろした瞬間、片桐の空気が一変した。優しげだった老人の目が、鋭く冷徹な「指揮官」のそれに切り替わる。

「綾音くんから話は聞いていると思うが……単刀直入に言おう。我が高校で、暴力と窃盗事件が勃発している」

片桐は組んだ指の隙間から、冷たい光を放つ目で彩華を見つめた。

「既に主犯の目星はついている。だが、決定的な証拠がない。相手の親は多額の寄付金を高校に落とす超有名政治家で、その兄はPTA会長。その権力を笠に着たバカ息子が、学校内に『カースト制度』なる不条理を作り上げ、手を汚さずに暴力集団を操っている。
下手に動けば、向こうは『人権侵害だ』『不当な扱いだ』と盾を突いて揉み消しにかかる。非常に、タチが悪い」

片桐の口から漏れたのは、現代社会の歪みが産んだ、あまりにも醜悪な隠蔽の構造だった。

それを聞いた瞬間、彩華の胸の奥で、明治の地で燃やしていた「法理の炎」がパチパチと音を立てて再燃した。

(どこの時代にも……権力に胡坐をかき、弱者を踏みにじる不逞の輩がいるというのですか……!)

そんな彩華の静かな怒りを察したように、片桐は身を乗り出した。

「そこで、彩華くん。君には転入生として我が校の内部へ潜入し、綾音くんのデジタル解析と連携して、奴らの言い逃れのできない物的証拠を掴んでほしい。無論、君の身の安全と今後の生活は、私がすべて責任を持って保証しよう。……どうかね?」

差し出された「鴉」の手。
行くあてのない孤独な少女としての選択は、すでに決まっていた。いや、それ以上に、理不尽に泣き寝入りさせられている生徒たちの存在が、彼女の正義感を突き動かしていた。

彩華はすっくと立ち上がり、袴の裾を正すと、片桐の目を真っ直ぐに見据えて頭を下げた。

「橘彩華、謹んでそのお役目、お引き受けいたします。我が身を賭して、その学校内での不条理、法の論理の元に粉砕してみせましょう」

「……ふっ、手厳しいな。頼もしい限りだ」

片桐が満足そうに口元を歪め、その傍らで、綾音もまた不敵な笑みを浮かべた。

令和のデジタルハッカー、神城綾音。
明治のリーガルガール、橘彩華。
交わるはずのなかった二人の怪物が、闇の組織の元でついに結託した。現代の歪んだ高校内に蔓延るカーストたちを激震させる、復讐と救済の幕が、今、切って落とされるのだった─

次回予告

私立・妃比谷高校の理事長にして、闇の組織の総司令官──片桐果弦(かたぎりみつる)

その最強の片腕となり得る、令和の電脳ハッカー(電脳の竜)と明治のリーガルガール(白理の狼)がついに出揃いました。

「鴉」の指揮のもと、最先端の電脳技術不変の法律論拠を武器に、彼らは学校を貪る愚かな権力者たちへ鉄槌を下すことができるのか。

現代の闇、その真の黒幕を撃墜するための戦いが、ついに幕を開けます。

次回、第4話『歪んだ聖域への潜入 〜美しき帰国子女と、硝子の板の盗難事件〜』

ついに始まる彼らの初陣を、どうぞお楽しみに。

まとめ

『電脳の竜と白理の狼 〜デジタルハッカーと明治のリーガル・ガール〜』第3話をお読みいただき、ありがとうございました。

ひょんなことから最悪の出会いを果たした神城綾音と橘彩華が、ついに「闇のバディ」として手を組むこととなりました。

令和と明治、電脳と法律──。生きる時代も属性も全く異なる二人が、悪に傷つけられた共通の過去を胸に、これからどのように共鳴し、現代の歪みに立ち向かっていくのか。

片桐理事長の指令のもとで動き出す彼らの進撃は、まだ始まったばかりです。

ぜひ、激動の第4話以降も、二人の行く末を温かく見守っていただければ幸いです。

次回、二人が初めて学校の闇へ挑む初陣──第4話『歪んだ聖域への潜入 〜美しき帰国子女と、硝子の板の盗難事件〜』をどうぞお楽しみに。

それでは、今回はこの辺で。

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