毎日使うキーボードの「Q」「W」「E」…打ちにくい並び順の裏にある150年前のドラマ

PC(パソコン)
橘彩華
橘彩華

神城さん。この『キーボード』という機械、文字の並び順が支離滅裂ではありませんか? いろは順……いえ、せめてアルファベット順に並べた方が扱いやすいと思うのですが

神城綾音
神城綾音

「あー、『Q』『W』『E』『R』『T』『Y』って並んでるやつか。現代人は慣れすぎてて深く考えたこともなかったけど、言われてみれば確かに不思議だな」

橘彩華<br>
橘彩華

ですよね! なぜこんな打ちにくい並び順になっているのか、気になってしまって……

神城綾音
神城綾音

よし、気になったら検索だ。……うわ、なにこれ。この不規則な配置、なんと150年前の技術者たちが起こしたドラマが関係してるらしいぞ

橘彩華
橘彩華

150年前というと、ちょうど私が過ごしていた明治の初期……!? なんだか急に親近感が湧いてきました」

神城綾音<br>
神城綾音

だろ? なぜ一見不便なこの配列が生まれ、現代まで残り続けているのか。そのルーツを一緒に調べてみよう

なぜ「ABC順」じゃない?不自然すぎるキーボードの現状

今や1人1台が当たり前となったパソコン。

私たちの大半は特に疑問も持たずに文字を入力し、慣れた人ならキーボードを見ずに打つ「ブラインドタッチ」を難なくこなしています。

しかし、ふと立ち止まって手元を眺めてみてください。

このキー配列、冷静に考えるとかなり不自然ではないでしょうか。

最もよく使う「A」は押しにくい左手小指の位置にあり、「E」と「R」のように使用頻度の高いキーが隣同士に並んでいる……。

私自身、初めてパソコンに触れた頃を思い返してみると、「なんでこんな押しづらい場所に『A』があるんだろう」と感じたものでした。

指が少しずれるだけで「S」や「Z」を誤入力してしまい、慣れるまでは一苦労した記憶があります。

そんな不便さも、慣れてしまえば「当たり前」として通り過ぎてしまうもの。

現代人なら「QWERTY(クワーティ)配列」という言葉くらいは耳にしたことがあるかもしれませんが、そのルーツまで説明できる人はごく少数派のはずです。

実際、私自身もこの記事を書くために調べるまでは、「Q」「W」「E」「R」「T」「Y」という並び順にどんな意味があるのかサッパリ分かりませんでした。

IT系の専門学校や講座でさえ、この配列の歴史まで教わる機会はまずありません。

「素直にアルファベット順(ABC…)や、五十音順にした方が絶対に覚えやすいはずなのに……」

パソコンに慣れていない方はもちろん、明治時代からタイムリープしてきた橘彩華なら、なおのこと「なんて不便な並び順なんだろう」と首を傾げるはずです。

実際、彼女が抱いたその素直な疑問こそが、神城綾音とともにキーボードの謎を解き明かすきっかけとなりました。

それにしても、なぜ私たちはこの一見めちゃくちゃに見える配列を、当たり前のように受け入れて使い続けているのでしょうか?

直接パソコンの操作に関係ない知識かもしれませんが、毎日使う道具の裏にある「150年前のドラマ」を知らずにスルーしてしまうのは、あまりにも勿体ない話です。

次の章では、この不自然すぎるキー配列が生まれることになった「150年前の謎」に迫っていきます。

QWERTY(クワーティ)配列の誕生――150年前の裏に隠されたドラマとは?

今やありとあらゆるパソコンのキーボードで、標準規格(スタンダード)として採用されている「QWERTY(クワーティ)配列」

先ほどもお話しした通り、「Q」「W」「E」「R」「T」「Y」という一見すると不思議な並び順で配置されていますが、一体どのような背景があって決まったのでしょうか?

実は、パソコンすら存在しなかった150年前の「あるドラマ」がきっかけで、この配列が誕生したと言われています。

一体どういうことなのか、その歴史を掘り下げていきましょう。

QWERTY配列にまつわるドラマは、150年前のタイプライター時代がきっかけ

時代は、日本で大政奉還が行われた1867年にまで遡ります。

この頃アメリカでは、発明家のクリストファー・ラサム・ショールズ(以下、ショールズ)をはじめとする開発メンバーたちによって、実用的なタイプライターの試作品が開発されました。

当時のタイプライターは、現代のQWERTY配列とは異なり、アルファベット順(ABC順)に並べられたシンプルな2段のキー配列だったそうです。

しかし、この初期のタイプライターは商用化されることなく、大幅な改良を余儀なくされます。

その理由は、タイプライターの「物理的な構造」に大きな問題を抱えていたからでした。

当時のタイプライターはピアノの鍵盤とそっくりで、キーを叩くたびに対応する金属ハンマーが跳ね上がり、用紙にバシッと文字を刻印していく仕組みでした。

内部にはキーの数だけ金属ハンマーがぐるりと「半円状」に並べられており、それらがすべて中央の『たった1点』に向かって跳ね上がる構造になっていたのです。

そのため、タイピングの速度が上がると致命的な問題が発生します。

前に打ったハンマーが元に戻りきる前に、次に打ったハンマーが同じ1点に向かって飛んでいってしまい、空気中でハンマー同士が「ガチン!」と激突して噛み合い、故障の原因になってしまったのです。

そこで彼らは、ハンマーの激突を防ぎつつ、実用的なスピードで入力できるようキー配置そのものを見直すことにしました。

「入力が速すぎるとハンマーが衝突して壊れてしまう。けれど、遅すぎても仕事の道具として使えない……」

その葛藤の末、絶妙なバランスで研究・再配置された結果生まれたのが、あの「QWERTY配列」だったのです。

私たちが毎日使っているこのキー配列が、橘彩華が生きた明治初期に生まれていたと思うと、なんだか深い歴史とロマンを感じますよね。

パソコンになっても「QWERTY配列」がそのまま残った理由

タイプライターの故障を減らしつつ、実用的なスピードでタイピングできるように「QWERTY配列」が開発された理由は分かりました。

しかし、それが一体なぜ、現代のパソコンのキーボードにまで引き継がれているのでしょうか?

「ハンマーが激突する心配がない現代のパソコンなら、もっと打ちやすい配列に変えればよかったのでは?」という疑問が湧くのも当然のことです。

ですが、それでも「QWERTY配列」が変わりづらかったのには、明確な理由が存在していました。

その理由とは、「世界中に広がった『人間の慣れ』を変えるのが不可能だったから」です。

19世紀末から20世紀にかけて、QWERTY配列のタイプライターは大ヒットし、世界中のタイピストや学校、企業へ一気に普及しました。

人々はすでに「指の記憶」として、この配列を身体に叩き込んでいたのです。

そこへ、のちにパソコン(コンピュータ)が登場します。

開発者たちは「まったく新しい打ちやすい配列」を採用することも検討できましたが、もし変更すれば、世界中の人々がキーボードの打ち方をイチから覚え直さなければなりません。

キー配置を一から覚え直すとなれば、当然タイピング速度は落ち、タイプミスのリスクも跳ね上がります。

ミスの連発で仕事にならないとなれば、本末転倒です。

そこで開発者たちは、「一番みんなの手が覚えている、あのタイプライターの配列をそのまま使おうと判断しました。

パソコンの誕生によってハンマーで用紙に印字する仕組みは消え去りましたが、それでも「使い慣れた配列のまま作業できること」こそが、当時の人々にとって最大のメリットであり、最良の選択だったのです。

150年前の「物理的な制限」から生まれた配置が、いつしか世界基準(デファクトスタンダード)となり、そのままパソコンへ引き継がれた――。

これが、ハンマーのなくなった現代のキーボードにも、あの不自然な並び順が残り続けている理由なのです。

機械の構造的な問題からユーザーの心理まで、さまざまな思惑とドラマが絡み合っていたと思うと、実に感慨深いものがありますよね。

実は他にもあったキー配列候補――「Dvorak(ドヴォラック)配列」の挑戦

タイプライターからパソコンへと時代が進む中で、キーボードの配列は変わるかと思いきや、「人々の慣れ」という理由からQWERTY配列がそのまま採用され、現代に至っています。

しかし、開発者たちも決して何も考えずにQWERTY配列を使い続けていたわけではありませんでした。

1930年代、QWERTY配列になじめない当時の生徒たちを中心に、「タイピング時の指への負担や打ちづらさ」に対する不満が噴出します。

そこで立ち上がったのが、ワシントン大学の教育心理学者、オーガスト・ドヴォラック博士でした。

彼は言語の統計分析や人間工学の研究を重ね、1932年に「Dvorak(ドヴォラック)配列」という画期的な新しいキー配列を作り上げたのです。

Dvorak配列では、左手のホームポジション(QWERTY配列の「A」「S」「D」「F」「G」の位置)に「A」「O」「E」「U」「I」という、文章で頻繁に使う母音を集中して配置しました。

一方、右手のホームポジション(QWERTY配列の「H」「J」「K」「L」「;」の位置)には、「D」「H」「T」「N」「S」などの主要な子音を配置したのです。

よく使う母音と子音を左右のホームポジションに振り分けることで、指の移動距離を最小限に抑え、タイピング時のストレスや疲労を劇的に軽減させることに成功しました。

まさに「人間にとって最強の配列」が誕生したわけですが、この配列を社会に普及させるにはあまりにも巨大な壁が立ちはだかります。

最大の障害となったのは、当時企業で雇われていたプロのタイピストたちの「再教育コスト」でした。

QWERTY配列に慣れ親しんでいたタイピストたちに新しいキー配列を導入しようとすれば、イチから指の動きを覚え直させなければなりません。

その育成にかかる時間や労力、そして一時的な作業効率の低下は、企業にとって甚大なデメリットだったのです。

そしてもう一つ、大きな壁として立ちはだかったのが「ハードウェアのコスト」です。

キー配列を変えるということは、オフィスにあるタイプライターをすべて買い直さなければならないことを意味していました。

「これまでのQWERTY配列と、新しいDvorak配列をうまく使い分けられれば良いのでは?」と思うかもしれません。

しかし、人間はそこまで器用ではありません

2つの配列を交互に使えば頭が混乱してミスタッチが連発しますし、作業現場のキー配列は1つに統一するのがベストなのです。

実際、現代のパソコンでも「日本語入力に適したJIS配列」「英語圏のUS配列」の2つを「日常的に完璧に使い分けろ」と言われたら、かなり難しいですよね。

こうした「人間の慣れ」「再教育の不可能性」「膨大な買い替えコスト」という現実的な問題から、最終的にQWERTY配列がそのままパソコンにも採用され、今なお世界標準として定着し続けているのです。

私たちは普段、この不自然なキー配列を単なる「そういうもの」として聞き流し、その背景にある歴史を意識することはほとんどありません。

しかし実はその裏に、150年もの歳月にわたる先人たちの葛藤やドラマ、そして試行錯誤を繰り返してきた「進化の証」が凝縮されていたのです。

そうした背景を知ると、毎日何気なく叩いているパソコンのキーボードに対して、どこか愛着のようなものが湧いてきませんか?

みなさんもぜひ、ちょっとした雑学として、この「QWERTY配列のドラマ」を頭の片隅に置いてみてください。

明日からパソコンに向かうとき、キーボードへの見え方が少しだけ変わってくるかもしれません。

まとめ

神城綾音
神城綾音

「というわけで『なぜQWERTY配列なのか』の謎、分かった?」

橘彩華
橘彩華

「はい! 単に打ちにくくしたのではなく、150年前のタイプライターで『ハンマー同士の衝突を防ぐ』ための極限の最適化だったのですね!」

神城綾音
神城綾音

「そう! のちに人間工学に基づいた『ドヴォラック配列』などのライバルも現れたけど、人々の『指の記憶(慣れ)』と社会的コストの前に勝ち目はなかったんだよ。」

橘彩華
橘彩華

「技術が進化しても人間の慣れには勝てなかった……そう聞くと、毎日叩くキーボードに150年分のロマンを感じますわ。……あ、でもわたくしの『A』を打つ左小指が痛い現実だけは変わりませんけれど〜!泣」

思わずそんな賑やかな会話が聞こえてきそうな今回の「QWERTY配列」の謎

その正体の裏には、150年もの壮大なドラマが現代のパソコンへと脈々と繋がっているという、実に感慨深い歴史がありました。

ぜひ皆さんも、このキーボードの歴史に思いを馳せながら、日々のパソコンに触れてみてください。

綾音や彩華のように、いつものキーボードが少しだけ愛おしく感じられるかもしれませんよ。

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