第14話『不協和音の残響と偽りの鍵盤(フェイク)(後編)』

小説『電脳の竜と白理の狼 〜デジタルハッカーと明治のリーガル・ガール〜』

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「クリーン」を売りに厚い支持を得る政治家・澄川冴子が、AIフェイク動画による誹謗中傷の被害に。

その矛先は、妃比谷高校に通う天才ピアニストの息子・真白にまで向き、親子は世間の批判に晒されてしまいます。

匿名で拡散した者、そして影で糸を引く黒幕――この卑劣な犯人たちを許すわけにはいきません。

T.C.S.Lの面々は主犯格を特定し裁くことができるのか……!

と、その前に、事件勃発編となる第13話を振り返ってみましょう。

【第13話あらすじ】
陸上大会で快挙を成し遂げた夏目菖蒲たち。

その余韻も束の間、妃比谷高校に新たな闇が忍び寄る。

結信未来連合の衆議院議員・澄川冴子と、その息子・真白を狙った悪質なAIフェイク動画騒動。

卑劣な事件を前に、T.C.S.Lが立ち上がる…

神城綾音の脳内プロット:第14話『不協和音の残響と偽りの鍵盤(フェイク)(後編)』

過去には、国民のためにクリーンな政治を行い、国民からの支持を得ていた結信未来連合の元党首で現在衆議院議員として活動する澄川冴子……。
彼女のイメージや支持率が一気に急落したのは、今彼女とその息子・澄川真白が被害に遭っている、AIフェイク動画を使った姑息で卑劣な誹謗中傷事件だ。

精神的に追い詰められ限界に達したのか、澄川真白は理事長を務める片桐果弦に相談を持ちかけ、T.C.S.Lの面々にもその話は伝わる。自室でモニター越しにその話を聴いていた神城綾音は自信満々に「なんとかしてやるよ!」と息巻いていたものの、事件としてはなんとも取っ掛かりのない怪事件……。

果たしてどうしたものかと思案を巡らせる綾音は、早速、得意のハッキング能力を駆使して、この誹謗中傷動画を投稿したポストを解析し、どこから投稿されたのかを突き止めた。
そのフェイク動画が投稿された場所は、とある漫画喫茶だった……。

すぐさまアカウント開示請求を出すことも可能だが、相手が対応を拒否したら話は前に進まない。
そこで綾音は、かつてこの手の事件の報道において捜査・取材協力した、大手出版社編集長の浪河茂道へ打診することにした。

「浪河さん、ご無沙汰!実はちょっと困ったことがあるんだけど、協力してくれない?以前、SNS関連の誹謗中傷事件で協力したんだし、あの時の貸しを返してくれたら助かるんだけど……」

と話を持ちかけ、渋々ながら捜査協力を取り付けることに成功。もちろん「事件解決に協力してくれたら、すべて記事に出して手柄を独り占めしてくれて構わない」という条件付きでだが……。

この取引が成立し、大手出版社のとてつもない取材能力を駆使して、某漫画喫茶でフェイク動画が投稿されたと思わしき時間の防犯カメラ映像と、そこに映っている人物を特定することに成功した。
どうやらこの映像に映っていた人物は、澄川議員と同じ選挙区で議席を争う新和党の大物議員・小野寺貴文がバイトとして雇っていた人物らしい……。

調査報告によると、小野寺は澄川議員を蹴落とすために、名の知れぬ一般人をバイトとして雇い、多額の報酬と引き換えに誹謗中傷動画をSNSで拡散させていたようだ。
それも、その報酬はすべて税金から出ているというのだから開いた口が塞がらない。

浪河からこの報告を受けた綾音は、あまりの衝撃に呆れるばかり……。
「何考えてるんだこの馬鹿(小野寺)は……いくらAIを使ってフェイク動画を作り拡散できるとしても、誹謗中傷動画のために税金まで使ってバイトを雇い拡散させるなんて、人間としてあり得ねぇ……」

そんな怒りの声を滲ませながらも、簡単に足のつかない小野寺やバイトとして雇われた作業員をどうやってねじ伏せるか考えていた。
そして、誹謗中傷の拡散には「容疑報道による社会的制裁」を加えるのが効果的だと考えた綾音は、早速浪河に打診。週刊誌のスクープ記事として、小野寺がAIフェイク動画を拡散させた黒幕であることが全国規模で拡散されていく。

当然、小野寺は知らぬ存ぜぬの一点張りどころか、「名誉毀損で訴訟を起こす」と強気な態度を取ってくる。

そこで、今度は彩華の出番だ。
浪河たちが取材した情報や証拠を元に実行犯を特定し、名誉毀損・誹謗中傷・生活妨害に伴う損害賠償・傷害罪という、民事・刑事を組み合わせたW訴訟を起こすと警告。決定的証拠映像までバッチリある状況で、抗いようのないところから法的手段で追い詰める作戦に出た。

当然、小野寺側からも圧力がかかってくるが、「彩華たちは関係ないだろ、それともあなたが指示したのか?」と突っぱねる。確かに何の関係もない第三者が、いきなり名誉毀損を訴えてくることなど不可能。法的手段を用いて実行犯を訴えることは、自ら罪を認めるのと同じであり、小野寺には不可能な話だ。

手も足も出せない状況を法的手段で作り上げた彩華は、実行犯に法的交渉を持ちかけていく……。「誰に指示されて動いたのか証言したら、多少罪を軽くし示談に応じてやる」と。
すると、我が身可愛さからか、実行犯の口から小野寺の名前が出てきたのだ。

この証言を元に、彩華たちは現在アメリカ政府のITコンサルのため出張中である綾音の父のパイプラインを活用することに……。
「日本の国会議員が公金を流用し、自国のSNSプラットフォーム上で大規模なサイバー情報工作(フェイク動画拡散)を行っている」として、大胆にも米国土安全保障省およびFBIサイバー部門から日本政府(外務省・警察庁)へ、「日米サイバー協定に基づく公式な調査照会・厳重注意」を打診させたのだ。

米政府からの公式照会が入ったことで、流石に日本警察も小野寺への忖度でもみ消すことが不可能な状態へと追い込まれてしまう。
結果、即座に小野寺宅への家宅捜索令状が交付された。

令状交付後、警察の手によって小野寺宅が家宅捜索されると、被害者・澄川真白と同じ妃比谷高校3年生のピアニストで、小野寺貴文議員の息子である小野寺連音(おのでら れのん)が、澄川冴子のAIフェイク動画による誹謗中傷騒動をさらに拡散させ、真白まで誹謗中傷させていたことが発覚。

父・小野寺貴文は同じ選挙区で何かと目につく澄川冴子を邪魔に感じて潰そうと画策し、一方息子である連音は高校生ピアニストである真白に嫉妬し、母親の嘘のスキャンダルに乗じて一緒に潰そうと考えていたようだ。

嫉妬に狂い、卑劣な情報工作に手を染めた連音という『偽りの鍵盤』は、自ら鳴らした不協和音の残響とともに惨めに警察へ連行されていく。
一方、事件の渦中から解放された真白は、静かに再びピアノの前へと向かい、嘘や嫉妬では決して辿り着けない『本物』の音色を響かせることで、傷ついた母と自分自身の誇りを静かに取り戻していくのだった。

いずれにしても悪質極まりない愚行を働いた小野寺親子と実行犯は警察に逮捕され、澄川親子のスキャンダルも報道によって一旦は解放されたものの、一度傷つけられた心の傷は簡単に消えることはない。

そこで彩華の助言もあり、澄川親子は小野寺親子に対して刑事告訴だけでなく、巨額の損害賠償請求を叩きつけることに。
狼狽する小野寺親子を前に、彩華は凛とした表情でこう言い放った。
「刑事罰は国家に対するもの。ですが、あなたがたが踏みにじんだ澄川親子の尊厳への代償は、一分一厘まで払っていただきます」

彩華の容赦ない言葉が小野寺親子に突き刺さり、後日、1億円規模の損害賠償請求および刑事訴訟を起こされてしまう。

さらに話はここで終わらない。澄川親子を傷つけた罪への代償は、国家をも揺るがす大事件となっていく……。

アメリカ政府からの厳しい指摘を受け、日本政府は安易なフェイク動画拡散や誹謗中傷に対処すべく、主要SNSプラットフォームに対する一時的な法規制・利用制限措置という異例の事態に踏み切ることになった。
その結果、日本中でSNS使用禁止による大混乱が生じてしまい、さらには公金を使った誹謗中傷案件に世間は大バッシング!

事態は小野寺議員の騒動だけで収束することなく、彼の所属する新和党の政権支持率にも大きな影響をもたらし、それまで約60%もあった支持率が、一気に15%へと急落する事態へ……。
当然、新和党もこの事案を容認などせず、小野寺議員を除名するだけに留まらず、多額の損害賠償を請求する事態となった。

後日……。
澄川親子が起こした刑事・民事W訴訟は、初犯ということもあり、小野寺親子に懲役4年執行猶猶5年の判決が下され、やや軽い刑事罰で済まされた印象は拭えないものの、1億円規模の損害賠償請求はそのまま通り、あらかた澄川親子の勝訴という形で幕を下ろす。

ただ、どのみち新和党からの損害賠償請求や、国家を揺るがす罪への贖罪、さらには社会的制裁等……まだまだ彼らに下される罰は終わらない。いずれにしてもこの一件をきっかけに、小野寺一家が落ちぶれていくことは間違いないだろう……。

その頃……。
澄川親子は、事件解決後もしばらく表立った活動は出来なかったとはいえ、小野寺親子から勝ち取った1億円の巨額な慰謝料によって、失われた生活が徐々に取り戻されていく……。
そして時間経過とともに世間の誹謗中傷や噂から解放され、少しずつ元の笑顔を取り戻していくのだった。

今回の事件、正直お金で解決できる話ではありませんが、まぁ1億円近くの慰謝料が入れば、人生を立て直すだけの余力はなんとか持てるでしょう。
息子・真白の今後のことも考えて、しばらくは綾音の父親の紹介もあってアメリカへ単身海外留学することに……。母・冴子は自身の名誉を回復させながら、国民のために汗水流して政治家活動に邁進する日々を送っていく。

その親子の顛末を知り、ようやく、ようやくT.C.S.Lの面々にも安堵の表情が生まれたのでした。

AIが創ったストーリー:第14話『不協和音の残響と偽りの鍵盤(フェイク)(後編)』

「――これで、逃げ道は完全に塞がったよ」

薄暗い部屋の中、トリプルディスプレイの青白い光に照らされながら、神城綾音は不敵な笑みを浮かべた。キーボードを叩く指先が軽快な音を奏でる。

結信未来連合の衆議院議員・澄川冴子と、その息子であり妃比谷高校の天才ピアニスト・澄川真白。二人をどん底に突き落とした悪質なAIフェイク動画騒動――取っ掛かりのなかった怪事件も、綾音の圧倒的なサイバー解析の前には時間稼ぎにしかならなかった。

「投稿元のIPアドレスを追跡して、ログと突き合わせ完了。……案の定、とある雑居ビルに入ってる漫画喫茶の個室ブースからだったね」

だが、ただアカウント開示請求を出すだけでは、相手が難癖をつけて拒否すれば時間がかかる。追い詰められた被害者の精神はそこまで持たない。だからこそ、綾音は即座に次の一手を打っていた。

端末の通話ボタンをタップし、スピーカーをオンにする。

『……やれやれ、急に呼び出されたと思えば、また厄介な案件かい? 綾音ちゃん』

スピーカーから聞こえてきたのは、大手出版社の編集長・浪河茂道の苦笑交じりの声だった。

「浪河さん、ご無沙汰! ちょっと困ったことがあるんだけど、協力してくれない? 以前、SNS関連の誹謗中傷事件で俺が手貸してあげた時の貸し、そろそろ返してもらってもいいでしょ?」

『ハッ、相変わらず抜け目のない兄ちゃんだ。……で、今回の獲物は?』

「結信未来連合の澄川議員親子をハメたAIフェイクの犯人。漫喫の投稿時間と防犯カメラの映像を照合して、実行犯を割り出してほしい。解決したら、この特大スキャンダルの裏側、全部浪河さんのところで独占スクープにしてくれて構わないからさ」

『――乗った。ウチの取材網を舐めないでくれよ』

浪河の返事は早かった。大手出版社の持つ泥臭くも圧倒的な調査能力が動き出すのに、何日もかからなかった。

数日後、浪河から送られてきた報告書を見た綾音は、思わずディスプレイの前で開いた口が塞がらなくなった。

「……何考えてんだ、この馬鹿(小野寺)は」

怒りに声を震わせる綾音。
漫喫の防犯カメラに映っていた男は、澄川冴子と同じ選挙区で熾烈な議席争いを繰り広げる新和党の大物議員・小野寺貴文がバイトとして雇った一般人だった。しかも調査によると、その多額の報酬はあろうことか政治資金(税金)から流用されていたのだ。

「いくらAIで精巧なフェイクが作れるからって……税金使ってバイト雇って誹謗中傷動画を撒かせるなんて、人間としてあり得ねぇ……!」

綾音はすぐさま浪河に合図を出し、週刊誌のゴシップ記事としてネットと紙面で一斉に特報を打ちち放たせた。

『新和党・小野寺貴文議員、公金を流用しAIフェイク動画で対立候補を誹謗中傷か!?』

日本中に激震が走る。だが、小野寺もさるもの。即座に緊急記者会見を開き、青筋を立ててカメラに怒号をぶつけた。

「すべてデタラメだ! 我が党と私に対する卑劣な名誉毀損であり、法的措置を辞さない!」

どこまでも知らぬ存ぜぬを突き通し、圧力でもみ消そうとする政治家。だが、T.C.S.Lには大人の権力など一切通用しない『法の番人』がいた。

「大言壮語もそこまでにしなさい、小野寺議員」

静かに前に進み出たのは、凛とした佇まいの少女・彩華だった。彼女は浪河たちが集めた決定的証拠と映像を手に、実行犯であるバイトの男へ直接アプローチを開始した。

名誉毀損、誹謗中傷、生活妨害に伴う巨額の損害賠償、そして精神的苦痛による傷害罪――民事と刑事のW訴訟を突きつけられた実行犯は顔面を蒼白にする。

慌てた小野寺側から「第三者が勝手にしゃしゃり出るな」と圧力がかかるが、彩華は冷徹な眼差しでそれを一蹴した。

「小野寺議員、あなたこそ関係のない第三者のはずでしょう? なぜあなたが口を挟むのですか? それとも……ご自身が実行犯に指示を出したと自白されるのですか?」

「くっ……!」

「第三者が名誉毀損を訴えることなど法的に不可能です。あなたが介入すれば、それ自体が罪の証左となる」

手も足も出せない状況を作り上げた彩華は、追い詰められた実行犯に向き直り、静かに微笑んだ。

「今すぐ誰の指示で動いたのかを正直に証言しなさい。さすれば、示談に応じ、あなたの罪を多少軽減する余地を残して差し上げます」

「言います! 小野寺議員に頼まれたんです! 多額の金をもらって、指示通りに拡散しただけなんです!」

我が身可愛さから、実行犯の口からあっさりと黒幕の名が吐き出された。

だが、これでもまだ小野寺は地元の警察や法務省に圧力をかけ、事件をもみ消そうと画策していた。そこで最後の仕上げとして動いたのが、綾音の父だった。

現在アメリカ政府のITコンサルとして現地に出張している父のパイプラインを通じ、綾音たちは大胆な『外圧』をかけたのだ。

『日本の国会議員が公金を流用し、自国のSNSプラットフォーム上で大規模なサイバー情報工作を行っている』

米国土安全保障省およびFBIサイバー部門から、日本政府へ発せられた「日米サイバー協定に基づく公式な調査照会と厳重注意」。
アメリカ政府からの直々の照会が入った以上、日本警察の一地方幹部レベルの忖度など一切通用しなくなった。

警察庁からの厳命を受け、即座に小野寺宅への家宅捜索令状が交付される。

ガサ入れに入った捜査員の手によって、小野寺のパソコンから次々と押収される公金流用の証拠。そして、その過程で思わぬ『もう一つの悪意』が牙を剥いた。

被害者である澄川真白と同じ妃比谷高校3年生であり、ライバルピアニストとして注目されていた小野寺貴文の息子――小野寺連音(おのでら れのん)。

彼の端末から、父の工作に乗じる形で、真白と冴子に対するAIフェイク動画を悪質に再拡散させ、真白個人のアカウントへ執拗な誹謗中傷を送りつけていた履歴が大量に発見されたのだ。

父親は選挙区で目障りな澄川冴子を潰すため。
息子は天才ピアニストとして脚光を浴びる澄川真白への歪んだ嫉妬のため。

親子揃って醜い欲望に身を任せた、悪質極まりない愚行。

「離せ! 僕は関係ない! ピアノのコンクールがあるんだぞ!」

見苦しく叫びながら、警察の手によって連行されていく小野寺連音。
嫉妬に狂い、卑劣な情報工作に手を染めた『偽りの鍵盤』は、自らが鳴らした不協和音の残響とともに、惨めに舞台を去ることとなった。

――その頃、妃比谷高校の音楽室。

事件の渦中から解放された澄川真白は、静かにグランドピアノの前へと向かっていた。
そっと鍵盤に指を置く。あふれ出したのは、澄み切った清らかな旋律。

嘘や嫉妬、フェイク動画などでは決して辿り着けない『本物』の音色が部屋を満たしていく。真白は演奏を通し、傷ついた母の心と、自分自身の誇りを静かに取り戻していた。

だが、T.C.S.Lによる追撃はこれで終わりではない。

逮捕され、報道によってスキャンダルから解放された澄川親子だったが、一度傷つけられた心が完全に癒えることはない。
彩華の助言を受けた澄川親子は、小野寺親子に対して刑事告訴のみならず、民事での巨額の損害賠償請求を叩きつけることを決定した。

顔を蒼白にして狼狽する小野寺親子を前に、彩華は凛とした表情で、氷のように冷たい声を言い放つ。

「刑事罰は国家に対するもの。ですが――あなたがたが踏みにじんだ澄川親子の尊厳への代償は、一分一厘まで払っていただきます」

彩華の容赦ない言葉が突き刺さり、小野寺親子には巨額の損害賠償請求の手続きが速やかに進められた。

そして、この事件が残した波紋は、一国家の政界をも揺るがす大混乱へと発展していく。

アメリカ政府からの厳しい指摘を受けた日本政府は、安易なAIフェイク動画の拡散や誹謗中傷に対処すべく、主要SNSプラットフォームに対する一時的な法規制・利用制限措置という前代未聞の強硬手段に踏み切った。

日本中でSNSが一時的に利用不能となり、世間の怒りの矛先は、元凶である小野寺議員と新和党へと向けられた。

「税金を私利私欲のネット工作に流用した挙句、社会を混乱させた」として大バッシングが巻き起こり、事件前に60%近くあった新和党の政権支持率は、一気に15%へと暴落。
当然、新和党も小野寺を見捨て、即座に党から除名。さらに党の信用を失墜させたとして、小野寺に対して多額の損害賠償を請求する泥沼の様相を呈した。

公金流用が発覚した新和党への政政交付金は全額没収となり、日本政治の歴史に刻まれる大惨事となったのである。

後日――。

澄川親子が起こしたW訴訟の判決が下りた。
初犯ということもあり、小野寺親子には懲役4年・執行猶予5年の判決が言い渡された。刑事罰としてはやや軽い印象を拭えなかったものの、彩華の手掛けた民事裁判では合計1億円規模という前例のない巨額の損害賠償請求が全面的に認められ、澄川親子の完全勝訴で幕を閉じた。

党からの追及、巨額の賠償金、社会的威信の失墜――身ぐるみをもぎ取られた小野寺一家が、これから落ちぶれていくことは疑いようもなかった。

一方、澄川親子の元には、少しずつ穏やかな日常が戻りつつあった。

事件後、すぐには表立った活動ができなかったものの、小野寺親子から勝ち取った1億円という慰謝料によって、生活の基盤はしっかりと守られた。時間とともに世間の噂や悪意も薄れ、親子の顔にはかつての笑顔が戻っていく。

「……ま、正直お金で解決できるような心の傷じゃないけどさ」

自室のモニター越しに、元気に登校する真白の姿を確認した綾音は、肩をすくめながらつぶやいた。

「1億円入れば、人生を立て直すだけの余力は持てるでしょ。真白くんも、俺の親父の紹介で近々アメリカへピアノ留学が決まったみたいだしね」

母・冴子もまた、自身の失われた名誉を完全に回復させ、再び国民のために汗を流す政治家として力強く歩み始めている。

画面を閉じ、椅子の背もたれに深く体を預ける綾音。
その唇には、どこか誇らしげで、優しい笑みが浮かんでいた。

不協和音は潰え、偽りの鍵盤は砕け散った。
晴れ渡る空の下、T.C.S.Lの面々の顔にも、ようやく穏やかな安堵の表情が生まれるのだった。

次回予告

国全体をも揺るがした悪質なAIフェイク動画誹謗中傷事件から数日後。

私立妃比谷高校の2年生たちは、待ちに待った修学旅行の朝を迎えようとしていました。

2年生として転入してきた橘彩華にとって、県外への旅行はこれが人生初のこと。

前に綾音とデートした秋葉原の電気街とはまた違う、見るものすべてが新鮮な旅の始まりです。

さらに、目的地である中国地方は歴史漂う名所の数々。

彩華にとって、どこか懐かしき明治の趣を感じさせる「歴航学旅(アーカイブオデッセイ)」が幕を開けます――!

果たして、彩華たちはこの旅でどんな物語を紡いでいくのでしょうか。

第15話『明治と令和を繋ぐ歴航学旅(アーカイブオデッセイ)』

「どこか懐かしき歴史の町並みに、心のときめきが止まらない!」

次回もお楽しみに!

まとめ

いつも『電脳の竜と白理の狼』をご覧いただきありがとうございます!

今回は「AIフェイク動画」をテーマにした事件の解決編をお届けしました。

学校を飛び出し政治まで絡む大事件で、「高校生がこれを解決できるのか……?」とプロット段階では不安でいっぱいでした。

ですが「目には目を」の精神で、メディアや法を駆使して立ち向かうスカッとするストーリーに仕上げることができました。

次回は少し趣を変えて、待ちに待った修学旅行編をお届けします!

明治からやってきた彩華が現代の歴史を探訪する、少し面白く温かい旅模様です。

時には頓珍漢な言動に目を輝かせる彩華と、彼女を支える仲間たちの姿を優しく見守っていただければ幸いです。

それでは今回はこの辺で。次回もお楽しみに!

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