自宅やオフィスで日常的に使われる通信技術「Wi-Fi」。
スマホやPC、スマート家電まで、現代のインフラとして欠かせない存在です。
しかし、
- 「Bluetoothと何が違うの?」
- 「なぜ同じ無線なのにこんなに速いの?」
- 「電子レンジで途切れる理由は?」
など、意外と知られていないことも多いのではないでしょうか。
紐解いていくと、そこには天才数学者のアイデアや世界標準化の歴史、目に見えない電波を制御する巧妙な技術が詰まっています。
本記事では、LANやBluetoothとの違いをおさらいしつつ、Wi-Fiの意外な命名秘話や技術雑学について分かりやすく解説します!
そもそも「Wi-Fi」って何?基本と仕組みを整理

冒頭でも触れた通り、現代のIT社会を支えるインフラとして欠かすことのできない通信技術の一つである「Wi-Fi」。
私自身もつい最近までBluetoothと混同していた部分がありました。
「端末同士の通信」と「ルーターを通した通信」の違い程度は説明できても、そもそも根本的な通信規格自体が全く異なるという点までは深く理解していませんでした。
なお、LANやWANといったネットワーク技術も含めた詳しい違いや性能については、別途以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
一言で言えば、「一定のエリア内に限定された無線通信技術」がWi-Fiであると捉えるとイメージしやすいかと思います。
関連記事:PCカタログが読めなくても分かる!有線LAN・Wi-Fi・Bluetoothの違い
実際、みなさんも自宅での通信(特にスマホやタブレット、PC)ではWi-Fiを利用し、外出先では携帯電話の回線を使うことが多いのではないでしょうか。
Wi-Fiは無線LANを用いたネットワーク通信であり、端的に言えば「有線LANケーブルが不要になった無線通信」と考えてください。
一方、携帯電話の回線による通信は、現代で言う4Gや5Gのように「電話基地局から飛ばされた電波」を受け取って通信する仕組みを指します。
モバイルWi-Fiなどを除き、自宅やオフィス、商業施設などのエリア内で接続するWi-Fiは、基本的に追加料金やデータ容量の制限を気にせず利用できます。
それに対し、携帯電話回線の場合は契約プランによって月々の容量制限が設けられていることが多い――このあたりも大きな違いと言えますね。
私自身、スマホのデータ通信はできるだけWi-Fiで行うよう心がけており、外出先では無駄なデータ消費を抑えるよう制限をかけています。
そのため、自宅ではiPadやスマホで残量を気にせず通信し放題、といった使い方になっています。
このように、Wi-Fiは「自宅やオフィス、あるいは商業施設などに引かれた光回線などを利用し、データ容量を気にせず快適に通信を行うための技術」と覚えておくと分かりやすいでしょう。
Wi-Fiの知られざる命名秘話と意外な誕生の歴史

さて、ざっくりWi-Fiのことをおさらいしたところで、皆さんに質問があります。
この「Wi-Fi」って何の略かご存知ですか?
正直に言ってしまうと、私自身もWi-Fiの歴史を知るまでは「Wireless Fidelity」の略だと誤認していました。
「Wireless Fidelity」を直訳すると「無線の忠実性」となり、「無線通信が精度高く行える」という意味合いで解釈できてしまいます。
そのため、Wi-Fiの略が「Wireless Fidelity」だと勘違いしてしまうのも仕方ありません。
しかし、実際にWi-Fiの歴史やルーツを紐解いていくと、意外な事実に驚かされます。
それでは、早速、Wi-Fiの真のルーツを紐解いていきましょう。
Wi-Fiの厳密なルーツはハワイの海を越える通信がきっかけだった

そもそも、Wi-Fiはハワイ大学で、島々にあるキャンパス同士をネットワークで繋ぐための無線通信技術がきっかけで誕生したものと言われています。
1971年、ハワイ大学では、島々に点在し遠く離れているキャンパス同士で連絡し合うために、ネットワークで繋がる必要性がありました。
当時、海底ケーブルで島々を繋ごうとすると莫大なコストがかかるため、なんとかケーブルなしで繋げないかと画策する動きがあったそうです。
そこで着目されたのが無線通信技術でした!
ハワイ大学内部では、「ケーブルが無理なら、ラジオのように電波でデータを飛ばせばいい」という発想をベースに、無線通信技術が開発されました。
しかし、ここである大きな問題にぶつかります。
無線通信を使ってあちこちからデータを送受信する際、複数の端末から同時に電波を出すと、電波同士がぶつかり合ってデータが壊れてしまうのです。
この問題を解決するために、「もしデータが衝突したら、少し時間を置いて送り直す」という新たなルールが設けられました。
このルールこそが、現在のWi-Fiのルーツと言われています。
そして、このハワイ大学の制定したルールが、初めて電波によるデータ通信(パケット通信)として後に世界へ普及していくわけですが、この段階ではまだ「概念や実験」の域を出ていませんでした。
その原因は、当時のアメリカ政府が電波を厳しく管理していたため、一般人が勝手に電波を出して通信を行うことができなかったからです。
概念・実験ではなく通信を一般利用させるための法整備

ハワイ大学が創り出したアロハネットは、1985年の時点では、まだ法整備が進んでおらず、あくまで実験や概念としての利用しかできませんでした。
そこで登場するのが、アメリカの通信規制機関(FCC)です。
1985年、FCCは、「2.4GHzなどの特定の電波帯(ISMバンド)は、免許なしで誰でも自由に実験や通信に使っていいよ」と宣言し、電波という「広大な道路」を世界に開放しました。
これで、「ハワイで生まれた通信ルールを使って、メーカーが自由に使っていい電波で製品を作れる」という舞台が整ったのです。
同時進行していた「2つの壁」と解決の道筋

アメリカの通信規制機関(FCC)の働きにより、1985年に2.4GHzなどの特定の電波帯(ISMバンド)に限って、免許なしでも自由に実験や通信に使えるようになりました。
しかし、ここで大きな2つの問題が生じてしまいます。
一つは、各メーカーが独自に機器を作ったことで「規格がバラバラで端末同士が正常にデータ通信できない」という問題。
そしてもう一つは、室内で電波を飛ばすと壁や家具に反射してノイズ(信号の乱れ)が発生し、「通信速度が絶望的に遅い」という問題です。
この「規格の統一(互換性)」と「通信速度・ノイズの克服」という2つの巨大な壁を打ち破るために、オーストラリアの「天文学者たち」と、国際学会である「IEEE(アイループルイー)」が動き出すことになります。
宇宙のノイズを除去する技術との出会い

アロハネットの登場やアメリカの通信規制機関(FCC)の働きによって、遠く離れた場所同士でも電波を使ってネットワーク通信が行える環境は整いつつありました。
しかし、当時の技術では通信速度が非常に遅く、建物の中では壁や家具に電波が反射してデータが乱れてしまうという大きな問題が勃発します。
精度の低い通信ではなかなかデータの送受信ができず、当時のユーザーにとってストレスは小さくありませんでした。
そこで、この問題を改善するために動いたのがオーストラリアの天文学者たちです。
1990年代初頭、彼らは宇宙の彼方にあるブラックホールを探すため、「宇宙から届く微弱でノイズまみれの電波から、必要なデータだけを綺麗に取り出す数学的手法」を研究していました。
ブラックホール探査自体は難航しましたが、彼らは「このノイズ除去技術は、部屋の中で反射してぐちゃぐちゃになった電波をきれいに復元するのに使えるのでは?」と気づきます。
ハワイで生まれた「無線通信の仕組み」に、オーストラリアの天文学者が作った「ノイズ除去技術」が融合したことで、ついに「室内のどこにいても途切れない、高速な無線LAN」の技術的ベースが完成したのです。
通信規格のバラツキを統一させる新たな規格の誕生

さて、先ほど「通信速度・ノイズの克服」においては、オーストラリアの天文学者たちの手によって改善されたとお話ししました。
しかし、もう一つの問題である「各メーカーで通信規格にバラツキが生じていた問題」は残ったままです。
実はこの問題も、「通信速度・ノイズの克服」と並行して、別の機関によって解決へと向かっていました。
1990年代初頭、規格がバラバラで端末同士が正常にデータ通信できないという問題を解決すべく、IEEE(アイ・トリプル・イー、通称:米国電気電子学会)というアメリカ・ニューヨーク州に拠点を置く機関が動き始めます。
ちなみに、IEEEとはその名の通り電気・情報工学における世界最大級の専門職団体(学会)であり、世界的な技術標準化を担う機関です。
そんなIEEEが約7年もの議論を重ね、1997年にようやく形にした世界共通の通信規格こそが「IEEE 802.11」でした。
IEEE 802.11では、主に以下のようなルールが細かく共通化されました。
- 通信を送受信する際の合図(手順)の統一
- 送信するデータの形式の統一
- 電波の使い方や、データの乗せ方のルールの世界統一
これらのルールを厳格に統一したことによって「IEEE 802.11」という規格が確立され、異なるメーカーの機器同士でも正常にデータ通信が行えるようになっていったのです。
そして、ここに先ほどご紹介したオーストラリアの天文学者たちの「ノイズ除去技術」が組み込まれることで、1999年には通信速度を大幅に引き上げた拡張規格「IEEE 802.11b」へと進化を遂げました。
Wi-Fiという名称の誕生

こうしてWi-Fiの技術的ベースとなる「IEEE 802.11b」が無事に完成したことは、通信業界にとって実に喜ばしい出来事でした。
しかし、ここで新たな問題が浮上します。
「IEEE 802.11b(アイループルイー 802.11b)」という正式名称はあまりにも専門的で言いづらく、一般の人々には到底親しみづらいものだったのです。
「これでは一般に普及しない。もっと呼びやすく親しみやすい名前はないか?」と業界内で模索が始まりました。
そこで、当時高音質なオーディオ用語として定着していた「Hi-Fi(ハイファイ)」という言葉の心地よい響きを拝借し、「Wireless(無線通信)だから『Wi-Fi(ワイファイ)』はどうだろうか?」というアイデアが提案されます。
この親しみやすいネーミングが見事に世界中で受け入れられ、現在の「Wi-Fi」という名称が定着することとなったのです。
(※ちなみに、「Wireless Fidelityの略」と言われることもありますが、これは後から広報がつじつま合わせで添えたキャッチコピーであり、実際は何かの略ではありません。)
以上が、Wi-Fi誕生までの歴史と「Wi-Fi」という名称が生まれた背景です。
普段何気なく使っているWi-Fiですが、そのルーツを紐解いてみると意外なほどユニークで、実に多くの人々の知恵と技術が携わっていることが分かりますね。
私たちもその歴史を知った上で、開発者の方々に感謝しながら、これからも快適なWi-Fi通信を活用していきたいものです。
Wi-Fiの電波が電子レンジと重なると通信が途切れる理由

最後に、ちょっと気になる身近な疑問についてお話ししておきましょう。
皆さんは、Wi-Fiで通信している最中に電子レンジを使ったら、突然ネットが重くなったり途切れたりした経験はありませんか?
一見、電子レンジとネット通信はまったく関係がないように思えますが、実は同時に使うことで電波が衝突し、通信の大きな邪魔になってしまうことがあるのです。
では、なぜ電子レンジを使うとWi-Fi通信が途切れてしまうのでしょうか?
その答えは、ここまでの歴史を読んできた皆さんならなんとなく察しがついているかもしれません。
実は、電子レンジから出る電波とWi-Fiの電波が「全く同じ周波数帯(2.4GHz帯)」を使っているため、お互いに電波がぶつかり合って強いノイズとなり、通信を邪魔してしまうからです。
ここで疑問に残るのが、「なぜわざわざ同じ2.4GHz帯を使っているのか?」という点ですよね。
歴史的な順序で言うと、実は電子レンジ(マイクロ波)の方が先に2.4GHz帯を使っていました。
その後、前の章でお話ししたように、アメリカの通信規制機関(FCC)が「免許なしで自由に使っていい電波」として2.4GHz帯を開放したため、後からWi-Fiも同じ周波数帯を使うようになったという経緯があります。
いわば「同じ道路(2.4GHz帯)」を後からWi-Fiがシェアさせてもらった形になるため、どうしても電波の衝突によるノイズが発生してしまうのが実情なのです。
現在では、電子レンジの影響を受けない「5GHz帯」や「6GHz帯」といった新しい周波数帯へ切り替える対策が進み、電子レンジとの干渉はかなり軽減されました。
とはいえ、今でも2.4GHz帯は壁や障害物に強いため広く使われており、電子レンジを使うと電波がぶつかって通信が途切れてしまうことがあります。
一見、多くの偉人や技術によって完璧に解決されたように見えるWi-Fiですが、身近な電波の仕組みの中には、まだまだ改善途中の課題や面白い裏話が残されているわけですね。
私たち利用者もこうした電波の仕組みを少し理解しておき、「動画を見たり大事な作業をするときは電子レンジの使用を控える」「ルーターの接続を5GHz帯に切り替えてみる」といったちょっとした配慮や工夫をして、ストレスのない快適なWi-Fi環境を作っていきましょう!
まとめ
今回は、Wi-Fiとはどういうものかを軽く押さえつつ、その誕生の歴史や、電子レンジを使うと電波が衝突して通信が途切れる理由について解説しました。
日常的に当たり前のように使っているWi-Fiですが、その裏側にはハワイでの挑戦からアメリカでの電波開放、そしてオーストラリアの天文学者によるノイズ除去技術まで、世界中の知恵と歴史が凝縮されています。
また、電子レンジとの電波干渉のように、身近な電波の仕組みを知ることで日常の通信トラブルを回避するヒントも見えてきます。
目には見えない電波の歴史や仕組みに少しだけ思いを馳せながら、これからもストレスのない快適なWi-Fi環境を活用していきましょう!




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