第8話『帷に隠されし不正トランザクション(校内恐喝隠蔽)事件(後編)』

小説『電脳の竜と白理の狼 〜デジタルハッカーと明治のリーガル・ガール〜』

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いよいよ第8話『帷に隠されし不正トランザクション(校内恐喝隠蔽)事件(後編)』にて解決編を迎えます。

本編の前に、まずは第7話のあらすじを振り返ってみましょう。

第7話あらすじ

タブレットPC事件後、妃比谷高校に訪れた平穏は、ある生徒の万引き騒動によって破られた。

背後に浮上したのは、電子マネーや仮想通貨を使ったねずみ算的なカツアゲ事件

黒幕と疑われるのは、新和党所属の大物議員・竹尾統宏(たけおむねひろ)を父に持竹尾統勇摩

しかし彼は彩華の追及を飄々とかわし、事件への関与も金銭授受もないと白を切り通す

その狡猾さに歯がゆさを感じつつ一時撤退し、綾音の自宅で作戦会議を開くT.C.S.Lの面々

果たして彼らは見えない不正を暴き、解決への作戦を企てることができるのか……!?

神城綾音の脳内プロット:第8話『帷に隠されし不正トランザクション(校内恐喝隠蔽)事件(後編)』

現在の政権与党・新和党の大物議員(竹尾統宏)を父に持つ、経済学部進学コース2年・竹尾統勇摩が、下級生や立場の弱い生徒を相手にカツアゲしたことはほぼ間違いないだろう。

しかし、統勇摩が主張しているように、本当に金銭をもらっていない可能性もあれば、たとえ金銭を受け取っていたとしても「単に預かって保管しているだけ」という可能性も完全に否定されたわけではない。

「ああ言われたら、なんともしようがない……」

彩華は悔しさをにじませていたが、それは彩華だけではなく綾音も同じ気持ちだった。

確かに、カツアゲされたというのは、お金に困って万引き事件をやらかした1年生の証言をきっかけに疑われている事実に過ぎない……。

証言をもとに徹底調査をすることも可能ではあるが、万が一冤罪ともなれば学校そのものの存在も危ぶまれてしまうし、何よりも訴えを起こすT.C.S.Lのメンバーの存在さえ危うくなってしまう。

そのことを考えると迂闊に手が出せず、バックで彩華たちをサポートする綾音や片桐も苦虫を噛み潰していたのだった。

そんな歯痒い思いをしながら、神城綾音の自宅でT.C.S.Lのメンバー(片桐は理事長室からオンラインで参加)は、統勇摩を追い詰めるための作戦会議を開いていた。

まず、片桐からT.C.S.Lメンバーへ報告されたのは、万引き犯の身元だった。

生徒は妃比谷高校1年の『近藤秀明』。 彼は盗んだゲームをオークションで転売し、統勇摩への上納金を工面しようとしていたのだった。
さらに、秀明が所有しているアカウントや個人情報なども、ある程度押さえ込んでいることが告げられる。

その事実を知った綾音は、「おっさんでかした! それなら話が早い……アカウント情報を乗っ取って金銭の流れをつかんだる直感!」と目を輝かせる。

一方、彩華も綾音に金銭授受の流れを押さえてもらいながら、リーガルガールとして統勇摩を詰める算段を練ると提案。

残った菖蒲・結衣の二人は、彩華が統勇摩を詰問しやすくなるように、他の生徒たちの証言を取りに行くこととなった。

確かに、カツアゲされた被害生徒たちは統勇摩を恐れ、証言をためらう可能性が高い。
しかし、たとえ生徒たちが恐怖で口をつぐんでいたとしても、複数の証言をもとに「必ず統勇摩を撃退する」と説得できれば、上手く証言を聞き出せるかもしれない。
菖蒲はクラス委員長も務める優等生で、人望もある。 たとえ学年やクラスが違えど、結衣と協力し合いながら被害生徒を説得し、証言を聞き出すことはできるだろうと、証言集めのミッションが任されたのだった。

こうして一通りの作戦・役割分担が決定し、その日の作戦会議は終了する……。

後日――。

綾音が『近藤秀明』の銀行口座やアカウント情報を調べることに成功。
その情報には、他の生徒からの電子マネー受け取り記録や、『ハマオカタダシ』という謎の人物への送金履歴がびっしり残っていた。
しかも、この『ハマオカタダシ』という人物への送金は一度きりではなく、数十回に分けて総額120万円もの大金であることが判明。

綾音は、「近藤秀明が他の生徒から集めた金や万引きしたゲームの転売金を、すべて『ハマオカタダシ』という人物に上納金として横流ししていたのではないか」と考え始めた。

早速さらに深く調べたところ、その考えは的中! ハマオカタダシ名義で購入されたと思われるブランド品の情報が次々と出てきた。
しかも、そのブランド品の送り先は竹尾統勇摩の自宅だと判明する。

もちろん、この情報だけでは証拠として乏しく、逆に違法行為(不正アクセス等)として訴えられかねない。

ただ幸いにも、このショッピング記録はアメリカの大手通販サイトが管理するデータであった。

実は、綾音の両親はアメリカ政府のIT支援のために現地に赴任中。
そのパイプを活用し、大手通販サイト側へ売買記録の正規な開示請求を行わせるよう交渉することが十分可能な状況だったのだ。

流石に日本の大物議員とて、アメリカ政府や米大企業を敵に回すことは不可能である。

近藤秀明の送金履歴は「万引き事件の聴取で得た情報」と言い訳が立ち、通販サイトの買い物履歴と配送先の情報は「アメリカ政府を通じた正当な開示データ」となるため、統勇摩側も安易に手出しはできない。

十分な証拠能力を持つ2つの情報を手にした綾音は、攻撃の手を緩めない。 他の生徒からの被害額と秀明が送金した金額を照らし合わせると、ぴったり120万円。
その120万円で豪勢に買い物三昧に明け暮れていた様子も、通販サイトの履歴から裏付けられた。

ここまでのことを踏まえ、綾音は以下のように推論をまとめる。

  • 秀明は、統勇摩(偽名:ハマオカタダシ)から総額120万円のカツアゲ被害を受けていた。
  • 送金は複数回に分けられ、その中には秀明が他の生徒からカツアゲした金額も含まれている。
  • 送金された金で、統勇摩はアメリカの大手通販サイトにてハマオカタダシ名義で豪勢に買い物をし、商品を自宅に配送させていた。

これらの推理を確証に変えるため、綾音は彩華に統勇摩を詰めさせると同時に、菖蒲・結衣へ被害生徒たちの証言集めを行わせるよう指示を出す。

綾音の思惑通り、彩華の尋問に屈した秀明はカツアゲの事実を認めた。
彩華は菖蒲・結衣の証言集めを待ちつつ、統勇摩をいかに詰めるか探っていたが、これ以上の被害を出したくないという強い思いから、証言の到着を待たずに単身で統勇摩のいる「経済学部進学コース」の教室へ乗り込む。

統勇摩のいる経済学部進学コースの教室に乗り込んだ彩華は、迷わず竹尾統勇摩の前に歩み寄ると、スマホの画面を叩きつけるように突きつけた。

「何やら変な情報を掴んだんだけど……説明してくれるかしら?」 表示されているのは、万引きで補導された1年生のスマホから得た金銭授受のデータ。
そこには『ハマオカタダシ』という名義へ、何度も電子マネーが送金された形跡がはっきりと残されていた。
「これ、カツアゲ被害に遭った生徒の送金履歴なのよ。この『ハマオカタダシ』という人物に、心当たりはないかしら?」 静まり返る教室の中で、彩華の鋭い眼光が統勇摩を射抜く。

当然、統勇摩は「何だよ! ハマオカタダシなんて人物知るかよ……」と突っぱね、白を切り通す。

すかさず彩華は「本当に知らないの?」と再確認した上でスマホの画面を切り替え、大手通販サイトでハマオカタダシ名義で購入されたブランド品が、なぜか竹尾統勇摩の自宅に配送されていた記録を突きつける。
彩華は立て続けに、「ハマオカタダシさんを知らないというのに、なぜこの人はあなたの自宅にわざわざ高額で購入したブランド品を送りつけているのかしらねぇ……」と問い詰めていく。

統勇摩は「何だよこの捏造されたデータは……!」と反発し、「そもそもどこからそんな情報を仕入れたんだ、プライバシー侵害で訴えるぞ!」と息巻く。

しかし、そんなことは想定内とばかりに彩華は言い放つ。

「あら、これはあなたが多額の買い物をされたアメリカの大手通販サイトから正式に提供してもらった情報なのですが、まさかそれが捏造だと? もし捏造とおっしゃるなら、アメリカの通販サイトの証言も付け加えて証拠として警察に提示させていただきますけれど……まさか、アメリカの企業に喧嘩を売る気じゃないでしょうね?」 さらに彩華は、「もしあなたにカツアゲされるために近藤秀明くんが他の生徒からカツアゲしていたとするなら、これ相当重い罪になりますわよ」と畳みかける。

アメリカという巨大な存在まで持ち出された彩華の追求にたじろいだのか、統勇摩は『ハマオカタダシ』という偽名で買い物をしたこと自体は認めた。
ただし、「送金記録の人物とは別人だ」と依然として白を切り通す。

その悪態ぶりを見た彩華は攻勢の手を緩めない。

「同姓同名にしては、ハマオカタダシという人物に送金された金額と、あなたがハマオカタダシ名義で買い物された金額がドンピシャで合致しているのですが、なぜですか?」

彩華と統勇摩が舌戦を繰り広げている最中、そこへ菖蒲と結衣が割って入ってくる。

「彩華ちゃん、証言集めてきたよ!」 ナイスタイミングとばかりに、彩華はさらに攻勢に出る。

「実は彼女たちにお願いして、この送金記録にある生徒たちの証言を集めてもらったんだけど……どうやら近藤秀明にカツアゲされていたのは間違いないみたいね。まさか、これあなたが指示してないわよね? 嘘をついても、近藤秀明に事情聴取すればわかることですよ……」

いよいよ追及の手が緩むことはないと悟ったのか、ついに金銭授受の事実を認めてしまった統勇摩。

「あぁ、金銭はたしかに受け取ったが、別に寄付されただけだ! それのどこが悪い!?」と開き直ってしまう。

その言葉を待っていましたと言わんばかりに、彩華は静かにほくそ笑む。

「ほぉ……寄付ですか? 本当に寄付なんですのね? そもそも寄付だとしても、なぜあなたに総額120万円も寄付する必要があるのでしょうか? まさか、お父様のお名前をちらつかせて寄付を強要してませんよね……」

彩華の詰め寄りに、統勇摩は「そんなん知るかよ! 寄付は寄付……何が悪いんだ!?」と突っぱね返す。

しかし彩華は負けじと、「寄付の概念、ご存知?」と問うた上で、「寄付とは行う本人の意思があって行うもので、当然寄付額も個人の気持ちによって変わるはずですが……なのに、なぜ近藤秀明くんはカツアゲや万引きをしてまで、あなたに120万円も『寄付』をしたのでしょうね?」と追及する。

統勇摩は「知らねえよ」の一点張り。

さらに彩華は、「それでも『寄付』と仰るのであれば、当然、贈与税は支払っていますよね? 基礎控除である110万円を超える120万円の寄付額は贈与税の対象となりますのよ。もし納税していないとすると、国税庁やマルサが黙ってはいないと思いますが……」と詰め寄る。
加えてトドメとばかりに、「当然、お父様の名前を出しての寄付となると政治資金規正法違反のおそれも出てきますし、寄付そのものは18歳未満のお子さんに対しては親御さんの了承が得られないとできません。万が一、親御さんが返金を求めてきたらあなたは全額返さなくちゃいけないのですが……わかっていますか?」と、統勇摩の逃げ道を完全に封鎖していった。

こうして統勇摩は成す術もなく撃沈。 父親の顔に泥を塗ってまで犯行を正当化することもできず、まくしたてた彩華の功績の前にひれ伏した統勇摩は、そのまま警察に通報されて御用となった。 結果的に、父親もこの一件をきっかけに失脚へと追い詰められていくこととなる……。

後日、カツアゲされたお金は無事生徒たちのもとに戻り、学校に平穏が訪れる。 ――カツアゲを強要されていたためだったとはいえ、ゲームの万引きや他の生徒へのカツアゲを行っていた近藤秀明を除いて。

AIが創ったストーリー:第8話『帷に隠されし不正トランザクション(校内恐喝隠蔽)事件(後編)』

「……ああ言われたら、なんともしようがないわね」

薄暗い部屋の中、モニターの青白い光に照らされた神城綾音の自宅。
キーボードを叩く音を止めた綾音の横で、彩華は握りしめた拳に悔しさをにじませていた。言葉の裏にある歯痒さは、彩華だけでなく綾音も同じだった。

現在の政権与党・新和党の大物議員である竹尾統宏を父に持つ、経済学部進学コース2年・竹尾統勇摩。彼が下級生や立場の弱い生徒を相手にカツアゲしたことはほぼ間違いない。
しかし、お金に困って万引き事件をやらかした1年生の証言があるとはいえ、統勇摩が主張するように「本当に金銭をもらっていない」可能性や、たとえ受け取っていても「単に預かって保管しているだけ」と言い逃れされる可能性は完全に否定できなかった。

証言をもとに徹底調査することも可能だが、万が一冤罪となれば学校の存在が危ぶまれるばかりか、裏で動く自分たち『T.C.S.L』の存在さえ危うくなってしまう。
迂闊に手が出せない状況に、オンラインで理事長室から参加している片桐も苦虫を噛み潰していた。

「……嘆いていても始まらないぜ。おっさん、例の件はどうなった?」
綾音の問いかけに、画面越しの片桐が重々しく口を開く。
『ああ。万引き犯の身元が割れた。妃比谷高校1年の近藤秀明だ。彼は盗んだゲームをオークションで転売し、統勇摩への上納金を工面しようとしていたらしい。奴が所有しているアカウントや個人情報なども、ある程度押さえ込んでいる』
「おっさん、でかした!」
その事実を知った瞬間、綾音の目が怪しく光った。
「それなら話が早い……! アカウント情報を乗っ取って、金銭の流れを全部掴んでやる!」
「任せたわよ、綾音さん」
彩華が不敵に微笑む。
「私はそのマネーフローをもとに、リーガルガールとしてあいつを完璧に詰める算段を練るわ。……菖蒲さん、結衣ちゃん。ふたりはカツアゲされた他の生徒たちの証言を集めてきて」

確かに、被害生徒たちは統勇摩を恐れて口をつぐんでいる可能性が高い。しかし、クラス委員長として人望のある菖蒲と、彼女をサポートする結衣が「必ず統勇摩を撃退する」と説得すれば、必ず証言は引き出せる。

「任せて。私たちが絶対にみんなの証言を取ってくるから!」
菖蒲が力強く頷き、結衣も小さく拳を握りしめた。
こうして、反撃のための役割分担が決定したのだった。

数日後。
綾音は自室の巨大モニタの前で、嘲笑を浮かべていた。
「……見つけたぞ、統勇摩」

近藤秀明の銀行口座やアカウント情報をハッキングした結果、そこには驚くべきデータが残されていた。他の生徒からの電子マネー受け取り記録、そして――『ハマオカタダシ』という謎の人物への送金履歴。
しかもその送金は一度きりではなく、数十回に分けて総額120万円もの大金に上っていた。

近藤秀明は、他の生徒から集めた金や万引きしたゲームの転売金を、すべて『ハマオカタダシ』に横流ししていたのだ。
「で、この『ハマオカタダシ』の正体は……と」
綾音がさらに深度を深めて追跡すると、予測通り、ハマオカタダシ名義のアカウントでブランド品が次々と購入されている履歴を発見。しかも、その配送先は竹尾統勇摩の自宅だった。

もちろん、このハッキング情報だけでは証拠として乏しく、逆に違法行為として訴えられかねない。
だが、綾音に抜かりはなかった。このショッピング記録は、アメリカの大手通販サイトが管理するデータだったのだ。綾音の両親はアメリカ政府のIT支援のために現地へ赴任中。そのパイプを活用し、大手通販サイト側へ売買記録の正規な開示請求を行わせるよう交渉することは容易かった。
「日本の大物議員の権力なんて、アメリカの大手企業と政府の前じゃ紙くず同然だぜ」

近藤秀明の送金履歴は「万引き事件の聴取で得た情報」と言い訳が立ち、通販サイトの履歴と配送先は「アメリカ政府を通じた正当な開示データ」となる。
他の生徒からの被害額と、秀明が送金した金額を照らし合わせると、ぴったり120万円。
完璧な証拠を手にした綾音は即座に彩華へ連絡を入れ、同時に菖蒲と結衣へ証言集めの指示を飛ばした。

綾音の思惑通り、尋問に屈した秀明はカツアゲの事実を認めた。
彩華は菖蒲と結衣の戻りを待ってから動くべきか一瞬考えたが、これ以上の被害を出したくないという強い思いから、単身で敵陣へ乗り込む決意を固める。

統勇摩のいる経済学部進学コースの教室に乗り込んだ彩華は、迷わず竹尾統勇摩の前に歩み寄ると、スマホの画面を叩きつけるように突きつけた。

「何やら変な情報を掴んだんだけど……説明してくれるかしら?」

表示されているのは、万引きで補導された1年生のスマホから得た金銭授受のデータ。そこには『ハマオカタダシ』という名義へ、何度も電子マネーが送金された形跡がはっきりと残されていた。
「これ、カツアゲ被害に遭った生徒の送金履歴なのよ。この『ハマオカタダシ』という人物に、心当たりはないかしら?」
静まり返る教室の中で、彩華の鋭い眼光が統勇摩を射抜く。

「……ハッ、何だよそれ! ハマオカタダシなんて人物、知るかよ」
統勇摩は鼻で笑い、白を切ろうとする。
だが、彩華はすかさず「本当に知らないの?」と再確認した上で、スマホの画面を切り替えた。
「ハマオカタダシさんを知らないというのに、なぜこの人は、あなたの自宅にわざわざ高額で購入したブランド品を送りつけているのかしらねぇ……」
「なっ……!?」
統勇摩の顔色が変わる。
「何だよこの捏造されたデータは……! そもそもどこからそんな情報を仕入れたんだ、プライバシー侵害で訴えるぞ!」
「あら、捏造? これはあなたが多額の買い物をされたアメリカの大手通販サイトから正式に提供してもらった情報なのですが、まさかそれが捏造だと?」
息巻く統勇摩を、彩華の冷徹な声が撫で斬りにする。
「もし捏造とおっしゃるなら、アメリカの通販サイトの証言も付け加えて証拠として警察に提示させていただきますけれど……まさか、アメリカの企業に喧嘩を売る気じゃないでしょうね? それに、もしあなたに上納するために近藤秀明くんが他の生徒からカツアゲしていたとするなら、これ相当重い罪になりますわよ」

アメリカという巨大な存在を持ち出され、統勇摩はついにたじろいだ。
「……ッ! た、確かにその名義で買い物したのは俺だ! だが、送金記録の人物とは別人だ!」
「同姓同名にしては、ハマオカタダシという人物に送金された金額と、あなたが買い物された金額がドンピシャで合致しているのですが、なぜですか?」
彩華の追及に統勇摩が言葉に詰まったその時、教室の扉が勢いよく開いた。

「彩華ちゃん、証言集めてきたよ!」
息を切らした菖蒲と結衣だった。
ナイスタイミングとばかりに、彩華はさらに攻勢に出る。
「実は彼女たちにお願いして、この送金記録にある生徒たちの証言を集めてもらったんだけど……どうやら近藤秀明にカツアゲされていたのは間違いないみたいね。まさか、これあなたが指示してないわよね? 嘘をついても、秀明くんに事情聴取すればわかることですよ……」

逃げ場を完全に塞がれた統勇摩は、ついに机を叩いて立ち上がった。
「あぁそうかよ! 金銭はたしかに受け取ったが、別に『寄付』されただけだ! あいつらが勝手に俺に寄付してきたんだよ。貰っただけの俺のどこが悪い!?」
開き直る統勇摩。
だが――その言葉を待っていましたと言わんばかりに、彩華は静かにほくそ笑んだ。

「ほぉ……寄付ですか。本当に寄付なんですのね? そもそも寄付だとしても、なぜあなたに総額120万円も寄付する必要があるのでしょうか? まさか、お父様のお名前をちらつかせて強要してませんよね……」
「そんなん知るかよ! 寄付は寄付……何が悪いんだ!?」
「寄付の概念、ご存知? 寄付とは行う本人の意思があって行うもので、当然寄付額も個人の気持ちによって変わるはずですが……なのに、なぜ近藤秀明くんはカツアゲや万引きをしてまで、あなたに120万円も『寄付』をしたのでしょうね?」
「知らねえよ!」

「まあいいわ。それでも『寄付』と仰るのであれば――」
彩華の瞳が、刃物のように鋭く光る。
「当然、贈与税は支払っていますよね? 基礎控除である年間110万円を超える120万円の寄付額は、当然贈与税の対象となりますのよ。もし納税していないとすると、国税庁やマルサが『大物議員の息子の裏金疑惑』として黙ってはいませんでしょうけれど」
「な……マルサ……!?」
「さらに、お父様の名前を出しての寄付となると政治資金規正法違反のおそれも出てきますし、寄付そのものは18歳未満のお子さんに対しては親御さんの了承が得られないとできません。万が一、親御さんが返金を求めてきたらあなたは全額返さなくちゃいけないのですが……わかっていますか?」

税法、政治資金規正法、民法。
「寄付」という言い訳を選んだ瞬間、統勇摩は自ら首を絞める最悪のトラップに飛び込んでしまったのだ。
逃げ道を完全に封鎖され、父親の顔に泥を塗る大スキャンダルに発展することを悟った統勇摩は、言葉を失い、成す術もなくその場にへたり込んだ。

まくしたてた彩華の完璧なロジックの前にひれ伏した統勇摩は、そのまま警察に通報されて御用となる。
そして結果的に、父親である竹尾統宏もこの一件をきっかけに失脚へと追い詰められていくこととなるのだった。

――後日。
カツアゲされた120万円は無事生徒たちのもとに戻り、学校には再び平穏が訪れた。
カツアゲを強要されていたためだったとはいえ、自らゲームの万引きや他の生徒へのカツアゲを行っていた近藤秀明を除いて……。

次回予告

学校内をおびやかしたカツアゲ事件を無事解決し、少しの休息が訪れた綾音と彩華⋯

そんな二人にご褒美とばかりか、20万円の予算を渡して、彩華のパソコンを購入す案内をしてやれと片桐から指示される綾音。

おそらく、片桐も二人の関係を縮めさせてあげたいと親心を見せたのだろう⋯

果たして、つかの間の秋葉原電脳デートで二人の距離はどこまで縮まっていくのだろうか⋯

次回、「明治と令和が交差する秋葉原・電脳ランデブー」

『時代を超えてのランデブーに、綾音・彩華超ウキウキ!』

次回をお楽しみに!

まとめ

『電脳の竜と白理の狼』第8話をお読みいただき、ありがとうございました!

どれだけ詰められても白を切り続ける難敵・竹尾統勇摩でしたが、T.C.S.Lの素晴らしいチームワークと彩華の鋭いロジックで見事に撃破してくれましたね。

事件解決の御礼として「彩華のパソコン選びに付き合ってやってくれ」と20万円の予算を綾音に渡し、ちゃっかり二人の秋葉原デートを仕掛けた片桐

事件の緊張感から解放された二人ですが、この秋葉原電気街お買い物デートを通してどこまで距離が縮まるのでしょうか……?

次回は事件をひと休みして、甘酸っぱいラブコメ展開でお届けします!

令和の社会に戸惑う彩華のオトボケぶりと、ツンデレハッカー綾音のツッコミのコラボレーションは必見です。

第9話『明治と令和が交差する秋葉原・電脳ランデブー』も、ぜひ温かい目で見守ってくださいね。

それでは、また次回お会いしましょう。

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