プログラミング言語はCOBOLからC言語、Pythonへと進化し、表現の幅を広げてきました。
しかし一方で、関数や文法の壁に阻まれ、挫折してきた「プログラマー予備軍」も多いはずです。
私自身も過去、Pythonでのクイズゲーム開発時に画面遷移の壁で挫折を味わいました。
そんな私たちの希望となるのが、直感や雰囲気を伝えるだけで高度なコードを生成する「バイブコーディング」です。
本記事では、ITmediaで話題となった『コードが書けない筆者が愛車用にアプリを2本自作』された事例や私自身の体験を交え、AIによるアプリ開発の凄さと、その裏に潜む「ハルシネーション(AIの嘘)」の危険性を解説します。
コードを「書く」から「伝える」時代へ!プログラミング言語の進化とバイブコーディング

子供の頃にゲームやコンピュータに触れた人なら、一度は「自分でプログラムを書いてアプリを作ってみたい」と憧れを抱いたことがあるはずです。
私もその一人で、学生時代に専門学校でC言語やアセンブラを学び、キャラクターを動かすコードを書いたことがあります。
当時は8ビットマシンが主流の時代。
ドット絵を何枚も用意して切り替えるプログラミングに挑戦したものの、文字通り「もう何が何やら」状態。
C言語の「関数」の壁に見事に打ちのめされ、挫折してしまいました。
社会人になってからも挫折の連続です。
大型汎用機の監視業務に携わりながら、上司にCOBOLを教わりデータ収集のプログラムを作ろうと試みましたが、理解が追いつかず断念。
その後、時代を経て「初心者にも扱いやすい」とされるPythonが登場した際も、クイズゲーム開発の「画面遷移」のロジックで再び挫折を味わうことになります。
このように、プログラミングは言語の進化とともに扱いやすくなってきたものの、常に文法や構造の壁が立ちはだかり、多くのプログラマー予備軍を弾き返してきました。
しかし今、そんな苦い経験を持つ私たちの希望となる技術が登場しました。
それが「バイブコーディング(Vibe Coding)」です。
指示書ややりたいことの「雰囲気(Vibe)」をAIに伝えるだけで、AIが自律的に高度なコードを組み上げてくれる——そんな夢のような開発スタイルが、いよいよ現実のものとなりつつあります。
これまでは、エラーが出るたびにどこがおかしいのかを解析し、コードを書き直しては実行する……という地道な泥臭い作業の繰り返しでした。
しかし、バイブコーディングではエラーの原因に頭を悩ませる必要も、詳しいプログラミング言語の文法を覚える必要もありません。
私たちが頭の中に抱いた「こんなアプリがほしい」というイメージや大まかな設計を伝えるだけで、AIが代わりに動くプログラムへと仕立て上げてくれます。
プログラミング言語を知らなくてもアプリが開発できる——例えるなら、「自分の思い(指示)を、コンピューターが動く言葉へ一瞬で変換してくれる万能な翻訳ツール」が登場したようなものです。
【実例】ITmediaの著者が挑戦!「コードが書けない」から始まったAIアプリ開発

バイブコーディングが登場するようになり、AIの力を借りることで実現できなかったプログラミング制作も実現可能となりました。
私が挫折したクイズゲームもAIにサポートしてもらいながら躓いていた画面遷移の壁を突破し完成に持っていくことが出来ましたし、私以上にAIによるバイブコーディングを巧みに使いこなし、実用化に至った事例もあるようです。
ITmediaで取り上げられたニュースでは、コードを全く掛けなかったこのニュースの著者が、実際にテスラの愛車アプリをバイブコーディングで2つ程開発した話題になっているようです。
引用元ニュース記事:コードが書けない筆者が愛車用にアプリを2本自作 「AI製アプリで起業」の夢膨らむも、見えた有料化の壁
このニュース記事によると、この記事著者で、IT・ビジネス分野のライターである山崎潤一郎氏が、自分のためだけのTesla用iPhoneアプリを2件バイブコーディングで開発したというエピソードを語っています。
山崎氏はiPhoneアプリの開発にプロデューサーという立場で携わっているらしいのですが、コードは何一つ書けないプログラミングの素人だったそうです。
そんな山崎氏が開発したアプリの1つが、テスラオーナー特有の悩みを解決する「高速料金チェッカー」です。
実は、テスラ車には、一般的な急速充電(CHAdeMO)とは別に、より高速で充電できる専用設備【スーパーチャージャー】が存在します。
しかし、このスーパーチャージャーの多くは、高速道路のインターチェンジ(IC)の外に設置されています。
そのため、「わざわざ高速を降りてスーパーチャージャーを利用した方がお得なのか、それともサービスエリア内に留まって一般的な急速充電を利用した方がお得なのか」という、テスラオーナーならではの悩みが生まれるわけです。
そこで山崎氏は、この【高速料金チェッカー】をバイブコーディングで開発。「充電代+再入場を含めた高速料金」のトータルコストを自動計算し、どちらのルートが一番お得かを一目で比較できるようにしました。
さらに山崎氏は、ガソリン車で言う「燃費」にあたる「電費」を気軽に計測したいと考え、「電費ログ」というもう一つのアプリもバイブコーディングで開発されたそうです。
既存の管理アプリは多機能すぎるがゆえに手軽さに欠けていたため、必要な機能だけに絞ってサクッと電費を確認できるツールを自作したといいます。
このように山崎氏は、全くコードが書けない状態から、自身の「困りごと」をピンポイントで解決する2つの愛車用アプリを見事に完成させました。
バイブコーディングの可能性とハルシネーションが潜む「商用化の壁」

自身に必要なアプリを即座に自作できるバイブコーディングですが、山崎氏はこれを事業化(有料化)して起業することに対しては慎重な姿勢を見せています。
そこには、AI開発ならではの大きな懸念——「ハルシネーションの危険性」と「デバッグの困難さ」が存在するからです。
AIは一見正しそうに見えて、実は存在しない処理や誤った記述(ハルシネーション)を平然と出力することがあります。
非エンジニアにとって最大の恐怖は、出力されたコードが本当に安全で正しいのかを、自分自身の目で検証(コードレビュー)できない点にあります。
自分ひとりで使う分には、多少のバグがあっても「まあいっか」で済みます。
しかし、対価を得て不特定多数に提供するとなると話は別です。
セキュリティの脆弱性や致命的な誤動作が発生した際、コードが読めなければ原因追究も修正もできず、責任を果たせません。
以前、当ブログ(過去記事)でも「AIによる開発を禁止・制限する動き」や「AI生成コードのデバッグがいかに厳しいか」というテーマを取り上げました。
関連記事:元デバッガーが驚いたGodot「AI禁止」の真相――検証の悲鳴とAIの付き合い方
AIが生成したブラックボックスなコードは、いざ不具合が起きた際、人間がゼロから書いたコードよりも解読やバグ修正(デバッグ)が遥かに難解になるという構造的な問題を抱えています。
バイブコーディングは、「自分のアイデアや困りごとを即座に形にする個人ツール」としては間違いなく革命的です。
しかし、それを「責任ある製品」として世に出すには、AIのハルシネーションを見抜く知識や、デバッグの壁を越える品質管理が依然として不可欠であると言えます。
バイブコーディングによって、コードが書けないユーザーでもアプリを開発できる可能性は大きく広がりました。
今後、個人開発の域を超えて事業化(有料化)し、ユーザーの納得を得るためには、AI特有のハルシネーション(誤出力)やバグをいかに制御し、アプリとしての信頼性を担保できるかが重要な課題となっていくのではないでしょうか。
まとめ
今回は、ITmediaの著者でありアプリ開発のプロデューサーでもある山崎潤一郎氏の実体験ニュースと私自身の体験談を交えながら、コードが書けない人でもAIの力でアプリを作れる魅力と、ハルシネーションが及ぼす事業化(有料化)の壁についてまとめました。
全くコードが書けなくても、テスラの愛車アプリを2つも作れてしまうというのは実に素晴らしいことです。
一方で、ハルシネーションによるバグやセキュリティの懸念から、商品として有料化するのは一筋縄ではいかないというリアルな課題も見えてきました。
AIの導入によって開発のハードルが下がったことを歓迎すると同時に、今後はハルシネーションを極力抑え、デバッグの壁をクリアして誰もが安心して商用化まで繋げられるよう、さらなる技術の発展に期待したいところです。




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